アパートやマンション経営をされている方の「相続時の節税」方法

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法人税・相続税 申告お役立ちブログ

2022.05.18

節税

アパートやマンション経営をされている方の「節税」方法

はじめに

超高齢化社会が進み、昨今は老後の不安から資産運用について考える方が増えてきました。
資産運用としてまず思い浮かべるのが株式と不動産の運用ですが、ここに大きく関わってくるのが税金の問題です。

特に不動産経営に関しては、しっかりとした税金対策をしないと不動産を次の世代に引き継ぐことは厳しいと考えるほどです。
また、株式、特に法人経営者の保有する非上場株式に関しても、相続対策や、後継ぎを円滑に引き継ぐための事業承継税制と言った対策がありますが、これは次回以降にお話ししたいと思います。

さて、先代から受け継いだ多くの貸付不動産がある方やご自身でアパート経営などを増やしている方などは多額の税負担は頭の痛い問題です。
また、将来自分が亡くなって相続となった場合に、子供たちに税金面などで迷惑をかけるようなことにならないか、そんなことを考えることもきっとあるはずです。

「節税」という税金上の有利選択を考えることは当然に個々の皆様の具体的な状況により変わる場合が少なくありませんので、これからお話しする一例は一般論として参考に頂ければと思っています。

不動産経営における所得税、消費税そして相続税の検討

「節税」を考える場合は、不動産所有時の税金(所得税や消費税など)と相続時の税金(相続税)をバランスよく検討しないといけません。今回のブログはそうした意味から多方面における「節税」を考えてみたいと思います。

例えば、多くの不動産所得がある個人地主に対する所得税などの節税手法の一つとして、貸付不動産のうち、土地はそのままにして建物だけをご自身の法人に移転させる方法が考えられます。建物が法人所有となることで、家賃収入を複数の親族に役員報酬として支給することが可能となり、個人所得の分散を図ることが出来るからです。

これは土地建物の不動産を全て個人で所有していた場合に比べ、相続税がかかる前に相続人となる親族に所得の移転を行うことが出来るために、相続税を減らす効果もあると言えます。さらに建物を所有した法人においては建物の減価償却費が計上出来ますので、法人税等の軽減にもつながっています。

土地まで法人に移転させてはどうかと考えるかもしれませんが、土地の時価売買に伴う譲渡所得税が多額に発生する可能性があること、法人側の購入資金が大きく膨らむこと、相続時における法人の株式評価額が高くなってしまうことなど、土地の移転はデメリットとなる可能性があります。既存の貸付建物を法人に移転させる方法は状況によりいくつかのバリエーションが可能ですが、多くは個人から法人への売買で行われることが少なくありません。

建物の売買は基本的に簿価売買で行って税務上問題はなく、譲渡所得税を心配することはありません。

建物の移転に際し借地権が発生することになりますが、「土地の無償返還に関する届出書」を提出することにより、借地権の認定課税を避けていくのが王道です。土地については、使用貸借ではなく賃貸借を前提としているため、固定資産税の最低2倍以上の地代を受払うことが必要となります。使用貸借も場合により有効なケースもありますが、相続を考えた場合には自用地の80%評価を狙って賃貸借の形式をとるべきでしょう。

もっともこの方法も相続が間近に迫っている場合は逆効果となりやすい点を注意しなくてはなりません。

なぜなら、建物の売買代金はその金銭そのもの額が相続財産となるため、売却しないで個人が保有した場合の建物の相続税評価額(固定資産税表額の7掛け程度とかなり低額となります)の方が、相続税の負担を考える場合に有利となる可能性が高いからです。

話が前後しますが、建物購入の法人は新設の法人が多いと言えます。設立したばかりの法人に建物を購入する金銭をどう工面するか考えるところですが、地主の信用と土地の担保提供により法人は銀行借入で購入資金を獲得することが可能となります。

ただし、個人側が建物の売却代金を大きく上回る銀行借入を元々していた場合は、建物売却代金で一部を返済してもなお残る借入金の返済に窮するケースが出てきます。賃貸物件の所有型法人によるスキームがうまくいかない実情はこのようなところにあると言えるでしょう。

家族信託の活用

こうした所有型法人の限界に応えられる方法として、家族信託の活用について少しだけお話ししたいと思います。

平成18年の信託法の改正により、免許や登録を必要としない家族のために行う個人的なものでも信託の仕組みを使うことが出来るようになっています。委託者である個人はその所有物である貸付不動産の運用を、受託者である法人に信託することができます。そして信託の目的に抵触しなければ、受託者である法人に信託報酬を支払うことが出来ますので、それが個人地主の不動産所得上必要経費になることができるのです。

従来から個人所有の不動産の管理会社として、ご自身ないし親族の法人に管理料を支払うスキームがよく行われていますが、管理実態に見合わない管理料を税務調査により否認さるケースが後を絶たず、管理会社としての法人活用は税務署に目の付けられやすいものになっています。一方、家族信託を使った仕組みは契約の定義が明確であり、実態の伴ったものです。不当な報酬設定をしない限りは実利に沿った効果が期待できると考えてよいでしょう。

家族信託で最も利用の多いものは、認知症の症状が現れる前に家族に財産を信託し、判断能力が亡くなった時に備えるやり方です。信託契約の中でお亡くなり後の受益権者を指定しておけば、遺言と同様の効果を生じさせることも可能になります。家族信託はメリットデメリットが双方有りますが、上記のような不動産経営にも使える可能性があることを覚えておくべきだと思います。

貸付不動産における最近の重要な税制改正(参考)

最後に不動産に係る最近の重要な税制改正についても簡単に説明しておきます。

① 国外中古建物の不動産所得に係る損益通算等の特例

令和3年以降、国外(主に米国)の中古貸付建物における法定耐用年数の中古短縮を使った減価償却費の早期計上による不動産所得の損失額は所得内通算及び損益通算が出来なくなりました。累進税率の所得税申告で多額の赤字を使う一方で、売却時の低利分離税率との差異を使った節税の防止策ですので、売却時も一律税率の法人では従来どおり適用可能となっています。

② 居住用賃貸建物の仕入税額控除の不適用(改正)

令和2年10月以降に取得した居住用賃貸建物の取得に係る消費税については一部の例を除き、仕入税額控除が出来なくなりました。
課税売上割合95%以上かつ課税売上高5億円以下の場合や一括比例配分方式の場合であっても仕入税額控除の対象にはなりませんので注意が必要です。

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